焼きながら接客する
その楽しさが私の原点
Baker
マーケティングディビジョン
山崎 彰徳
クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリー2008
(飾りパン部門代表)第6位
接客をやりたくて神戸屋へ
私は関西の出身で、神戸屋は袋パンなどで馴染みのある存在でした。その後、大学進学を機に上京し、学生時代は当時銀座にあった神戸屋によく利用していました。特に、アーモンドペストリーが好きでよく購入していた覚えがあります。
神戸屋には新卒で入社しました。志望のきっかけは、学生の頃にホテルで接客のアルバイトをしていたことから、接客の仕事に興味を持っていたためです。ですから当時は、パン職人になろうとは考えていなかったです。
入社後、最初に配属された店舗は、偶然にも学生時代によく通っていた神戸屋キッチン銀座店(現在は閉店)でした。はじめの半年間は店頭での接客を担当し、経験を広げるために製造を担当することに。パンづくりは人生初でしたから、本当に難しかった。特に銀座店は、当時ものすごく忙しいお店で、一日があっという間に過ぎてしまいました。でも、デニッシュなどのペストリー類の担当を任されていたので、学生時代に好きだったアーモンドペストリーもつくったりと、難しいながらも楽しくやっていました。
パンを焼きながら接客する
窯の醍醐味に魅了され
ペストリーの次に経験したのが、窯(焼成)担当でした。どうにもおいしそうな山型のイギリスパンに魅了されて、そこで完全にパンづくりにハマりましたね。
さらに、窯で焼く仕事というのは、製造のなかでもお客様とすごく近い部分を担います。お客様から質問を受けながらパンを焼き、棚に並べていく。それはまさに、パンをつくりながら接客しているような状態でしたから、本当に楽しくてしょうがなくて。もともと接客志望でしたから、いいとこ取りのような感じでした。
同時に、お客様ともっとお話しできるようにと、パンの知識を深めていきました。先輩方に聞いて、自分でも食べて勉強し、お客様によりおいしい食べ方の提案をしたり。この楽しさ、この経験が、私にとっての原点です。
また、窯担当をして、イギリスパンをはじめとした食事パンの魅力を知ったことも大きいです。食事パンは、いわゆる主食として日常を支えるものだと思うんです。そういう大事なものを自分がつくれるということ、しかも銀座という場所柄もあり、つくったものが飛ぶように買われていく嬉しさ。とにかく本当に、楽しかったんですね。
欧州視察での刺激的な体験
銀座店勤務後は、錦糸町、恵比寿と神戸屋キッチンの店舗を異動していきました。ベーカリー責任者として新店立ち上げに関わった錦糸町店では、苦労もありましたが、よりパンづくりに真剣に取り組むきっかけになりました。さらに、恵比寿店勤務時には、当時の桐山健一社長(現会長)の欧州視察に同行する機会をいただきました。バルセロナ、ニース、ナポリ、シチリア、ミラノでの視察、さらにニースではベーカリー、ミラノでは料理の研修先の店舗を視察するなど、本場のパン、料理のおいしさと成熟した食文化に感動しました。
帰国後はその経験を活かし、地中海の食文化をコンセプトにした新店舗の立ち上げに、責任者として携わりました(神戸屋スタッツォ エキュート大宮店 ※現在は閉店)。なかでも、食事に合わせるパンの開発は、自分としては初めての試みでしたから、とても刺激になりました。そしてこの大宮店の時代に、クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリー(パンの世界大会)にも挑戦することになりました。
同期の活躍に刺激され
世界大会を目指す
世界大会に挑戦しようと思ったのは、錦糸町店勤務時代の同期が、日本代表(飾りパン部門)の最終選考に出場したことがきっかけでした。彼とはすごく仲が良くて、最終選考前のトレーニングの様子も見ていたし、飾りパンのパーツも見せてもらったりして。だからもちろん、国内予選の会場に応援に行ったのですが、そこで衝撃を受けました。当日、会場で作品を作る彼の姿、そしてできあがった作品。それを見て、自分はあまりにも置いていかれている!と思ったんですよね。すごいとしか言えないというのが正直なところで、とにかく圧倒されました。
結局、彼惜しくも日本代表には選出されなかったのですが、そこで私も火がつきました。飾りパンの作り方は、以前から彼に教えてもらっており、自分もチャンスがあれば日本代表を目指してみたいと本気で考えるようになりました。
それから個人的に練習を重ね、まず2005年に行われた社内選考に挑戦しました。そこで会社の代表に選ばれ、2006年からはいよいよ国内選考へ。2007年の最終予選に出場し、飾りパン部門の日本代表になることができました。それからは、約1年後のパリでの本大会に向けてさらなる練習の日々。まずは個々の作品の完成度と作業量を大幅に上げることを目標に。また、代表チームのほかのメンバーが社外の職人であり、しかも関東と関西と拠点も離れていたので、チームで集まってのトレーニング時間の捻出は、会社のサポートに助けられました。
決勝では6位と、悔しさが残る大会にはなりましたが、本当に大事な挑戦の機会になりました。様々な企業の方とのつながりも増えましたし、今でもSNSなどを通じて交流を続けています。この貴重な経験を、今は日本代表を目指したい若手職人のサポートに役立てています。
本格的な冷凍生地で
世の中の課題を解決したい
現在は、店舗業務を離れ冷凍生地の商品開発を担当しています。人手不足の問題など、世の中の流れから、冷凍生地の需要は高まっています。そこで、神戸屋が店舗で提供している品質のパンと変わらないくらいの冷凍商品を開発する、という使命を持って日々研究を重ねています。実は日本のパンは世界でも人気がありまして、国内はもちろんですが、アジア圏を中心に海外でも人気があります。
パンは、酵母菌(微生物)による発酵と同時に、風味の醸成が進んでいき、焼成することでできあがる食べ物です。ワインやチーズと同じ発酵食品でありながら、焼成工程で酵母の役割を終えます。ワインやチーズと比べて、短時間で芳醇な香りを作り出すことができるのが面白いし、難しいところでもあります。特に冷凍生地は、発酵のコントロールが通常のパンづくりよりも難しいんです。むしろ、本格的な味わいの冷凍製品は、発酵技術にかかっているといっても過言ではありません。だからこそ、発酵に関しては、これまでに経験をもとにより深く考えるようになりました。
近年は、お米の不作など環境の変化によって食料事情が大きく揺らいでいます。そんななかで、パンという存在が日本でもますます重要になるのではないかと考えています。ただつくるのではなく、材料そのものの貴重さ、尊さにも目が向くようになりました。
私たちは材料メーカーの方からバトンを受け継ぎ、お客様に届けていく立場でもあります。不安定な時代だからこそ、パン業界全体で盛り上がっていきたい。そんな想いで仕事をしています。
マーケティングディビジョン
山崎 彰徳
クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリー2008
(飾りパン部門代表)第6位
1995年神戸屋入社。株式会社神戸屋レストランにて、キッチン店舗を中心にベーカリー部門を担当。店舗勤務の傍ら、欧州視察(イタリア、フランス、スペイン)に同行し、本場の食文化に刺激を受ける。その後、地中海の食を具現化したエキュート大宮店の立ち上げなどに参画。同店所属時にクープ・デュ・モンドに挑戦し、日本代表となる。現在は、冷凍生地の商品開発を担当する一方、日本代表を目指す若手メンバーのサポートを行っている。