勉強嫌いだったのに
パンだけは違っていた
Baker
店舗運営ディビジョン
梅谷 誠吾
クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリー2024
(飾りパン部門代表) 第3位
手に職をつけたくて神戸屋へ
小学校から高校までは、筋金入りの野球少年でした。伯父が甲子園の優勝監督だったこともあり、野球だ!野球だ!みたいな家庭環境でしたね(笑)。勉強はあまりがんばったタイプではなかったですし、就職するなら「手に職」がいいのではないかと、職人の道を選びました。それに、体力だけは人一倍ありましたから。
神戸屋を知ったのは、就職活動の時です。もともと職人志望だったこともあり、初めから「パンづくりをやりたい」という気持ちははっきりしていました。入社後は、当時大阪にあった神戸屋レストランの店舗に配属されました。入社3年目を迎えた頃に京都の新店舗に異動になり、そこからはほぼ2年に一度のペースで異動があり、10店舗以上でベーカリーの責任者を担当してきました。異動は特別多い方だったと思います。コミュニケーションも得意ですし、とにかく馬力があるので(笑)。使い勝手が良かったのかな?
はじめは全然パンづくりが
面白くなかった
パンづくりを始めたばかりの頃は、ずっと仕込みを担当していました。粉、材料、水、イーストなどを計量し、それをミキサーでひたすら混ぜていました。難しさもよくわからないままでしたし、はっきり言って仕込みは全然面白くなかったんです(笑)。最初はね。でも、仕込みの合間に成形をやるようになってから、急に面白くなりました。だから、仕込みをできるだけ早く終わらせて、成形に入る時間を増やしたい、という気持ちでやっていました。成形は、そもそも綺麗な形に整えることが難しいので、最初は全然できないんです。でも、徐々に上手くなって褒められるようになって、成長が自分でもよく見えるのが良かったんですよね。
自分は本を読んで勉強するようなタイプではありませんでしたから、初期はひたすら実務と先輩への質問で覚えていきました。そしてもちろん、自分でもたくさん食べました。田舎の出身でしたから、食べたこともないようなパンがたくさんあって、最初は甘いパンが好きでした。でも、続けていくと、小麦の違い、発酵の具合など、繊細な味わいの違いの方に興味が移り、今はやっぱり食事パンが一番好きですね。
先輩の活躍に刺激されて
挑戦した世界大会
世界大会を本気で意識したのは、入社6年目の時です。一緒に働いていたチーフがクープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリーに日本代表として出場し、世界1位を獲得したんです。その活躍を目の当たりにして、同期と一緒に「俺たちも出ようや」って、冗談のような本気のような気持ちで話していました。無知のなせる業なんですが。その同期もしばらくして退社してしまいましたが、なんとなく、そのうち出たいなとずっと思っていました。
初挑戦は、2020年大会でした。結果は最終予選で落選と悔しさが残り、4年後の大会での再挑戦を決めました。大会は基本的には自己啓発として挑戦するものですから、練習はベーカリーの営業終了後や休みの日を使ってやっていました。大変な日々の末、念願叶って2024年大会の日本代表に選ばれました。
クープ・デュ・モンドは、3人1組で日本チームとして出場するのですが、残りの2人は別会社の職人。それまで業務で社外の人と一緒になることはほとんどありませんでしたから、とても刺激的でしたね。月に一度3人で集まって練習を重ねるたびに、どんどん息が合ってチーム力が上がっていく。この3人だからこそのバランスは、まるで運命のように感じました。そう感じたのは僕たちだけでなく、メンバーが入れ替わったらうまくいかなかっただろうと、歴代選手が口を揃えて言っているのが面白いですね。
長い歴史の一部として
僕らもパンを進化させていく
世界大会に出場して、他社の同世代や、同じような目標を持った職人と話す機会が増え、どんどん視野が広がっていきました。これこそ大会の醍醐味だと思いますし、若い職人にもどんどん挑戦してほしい理由の一つです。
また、大会では普段の業務では作ったことのないパンに挑戦することになるので、勉強も必要です。学生の頃は勉強嫌いでしたが、パンに関してはまったく苦ではないんですよね。昔は感覚に頼って作っていましたが、理屈を知らないと修正が難しいと気づいて、理屈もしっかり勉強するようになりました。ただ、技術の本丸はやはり手を動かしたところにあります。理論と実践を交えながら勉強したものが、実際の形になって現れてくれるから、パンは面白いです。
パンづくりには、材料の組み合わせや製法の種類、発酵、グルテンのコントロールなど、さまざまな要素が複雑に絡んでいます。それこそ小麦そのものも進化しますし。そのなかで風味や食感を最大限に引き出すことで、感動するほどおいしいものが生まれる。それがパンという食べ物だと思っています。先人たちが長い年月をかけて積み上げてきた理論や技術の結晶を、その歴史の一部として、僕たちがさらに少しずつでも進化させていく。それが現代のパン職人の責任ではないかなと思っています。
30年近くこの仕事をしていますが、一生かけても納得できるかわからないところに、パン職人の奥深さがあります。何かを極めたいと思っている人には、とても魅力的な仕事だと思います。
あなたの「好きな神戸屋」を
探してみてほしい
現在は、関東と関西の神戸屋レストラン全店を中心に、職人への品質指導など主に人材育成を担っています。関東と関西を飛び回り、たくさんのメンバーと接していますが、やっぱりやる気のある若い職人たちが、訪れるたびに少しずつ仕事を覚えてうまくなっていくのを見るのが、今は一番楽しいですね。
いろいろな店舗を回っていて感じるのは、やっぱりパンは人なんだということです。チェーン店ですから、どの店舗でも同じような商品に仕上がっていると思われるかもしれませんが、レシピは同じでも作る人が違うと味わいも少しずつ違うんです。だからきっと、神戸屋を食べ比べてみると、「私はこのお店の味が好きだ」というのが出てくると思うんです。そうしてお客様に選んでいただけるように、店同士の切磋琢磨、人同士の切磋琢磨を日々やっています。本当は全部一緒にしなきゃいけないのかもしれないですけどね。でも、神戸屋は手づくりだから、少しずつの違い、少しずつの個性が自然と出てしまうのが、僕は神戸屋の面白いところだと思っています。
店舗運営ディビジョン
梅谷 誠吾
クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリー2024
(飾りパン部門代表) 第3位
1996年神戸屋入社。関西店舗を中心にベーカリー部門を担当。新店舗3店の立ち上げに携わり、現在は社内外で講習会や勉強会などの講師やイベント協力、後進指導を務めながら、レストラン店舗1Gを中心に品質指導などを行っている。