環境科学部環境生態学科卒。ロングセラー商品として人気を博す蒸しパンの製造を担当。神戸屋では毎月多くの新商品を発売するため、蒸しパンラインでも定番商品に加え、新商品を数種製造している。膨大な数の蒸しパンの生産体制を整えるのが山下の役割となっている。
「みんなに食べてもらえるものをつくりたい」と、パンに限定せず様々な食品会社を訪問するなかで神戸屋と出会った山下。決め手になったのは柔らかくアットホームな会社の雰囲気。将来は商品開発に携わり、自分が開発したパンをより多くの人に食べてもらうことが目標だ。
神戸屋の技術部門(生産系)の仕事の中には様々な職種があり、工場でパンや洋菓子、冷凍生地の製造に携わる仕事のほか、製品の試作・改良、品質管理、生産管理や製品の企画開発といった多彩な仕事がある。しかし入社してすぐに品質管理や企画に携われるわけではなく、将来どの職種に配属されるにしても、まず経験しなければならないのが製造ラインでの仕事だ。山下は今、技術部門(生産系)の登竜門として工場でのパン製造の最前線に身を置いている。「私は蒸しパンラインの仕込み、分割を担当しており、原材料を計量してミキサーで混ぜ合わせた生地を型に流し込み(分割)、蒸し上げる作業に携わっています」。蒸しパンは“パン”と呼ばれるものの、製造方法が通常のパンとは異なるのが特徴だ。「液状生地がベースなので、中に具材を入れる新製品の量産化は特に苦労します。何度テストをしても具材が浮いたり沈んだり、なかなかうまくいきません」と仕事の難しさを口にした。
- 蒸し上げ時の微妙な調整が商品のできあがりを左右する。だからいつも真剣勝負。
「本音を言うと、食品会社ってもっと華やかだと思っていたんです。でも実際は地味で地道な努力が求められる仕事。慣れない頃はそのギャップに苦しみ、自分にこの仕事が務まるのだろうかと悩みました」。悶々とした気持ちを抱える山下に転機が訪れたのは1年目の12月のことだ。蒸しパン係の上長がクリスマスケーキの製造に駆り出され、山下がライン責任者に抜擢されたのだ。「経験が浅く、未熟だったため、とても不安でしたが、この経験がモチベーションを取り戻すきっかけになりました」。一部の工程を担っていたこれまでの仕事とは違い、ライン全体を俯瞰してヒト、モノの管理を担う仕事を経験したことで山下は主体的に考え、行動する面白みを知った。「また、これまでは気付かなかったラインのチームワークを実感し、自分がいかに周りの人に支えられていたかを実感しました」。
- 原料を巨大なミキサーにセット。最初はきついと感じた作業も、もう難なくこなせる。
製造という仕事への新たな視点を得た山下は今、ラインの仕事に誇りを持って取り組んでいる。「この工程はもっと効率化できるのでは?など、進んで改善策を考えるようになったのが成長でしょうか。意識が変わり、仕事が俄然面白くなりました」と熱っぽく語る。「ただし、商品開発に携わりたいという夢を忘れたわけではありません。この間も工場のそばで女子高校生が“すごくいい匂い!ここのパン、おいしいよね~”と話していたのを聞いて、改めて自分が開発したパンをより多くの人に食べてもらいたいという想いが再燃しました。製造の経験を糧に、将来は必ず開発に携わってみせます」。大学時代の学びを活かし、米粉パンや野菜を使ったヘルシーなパンなど独自のレシピも考案中だとこっそり教えてくれたその横顔は晴れ晴れとしていた。
- 今日の生地もパーフェクト!質感を見るだけで、生地の良し悪しを判断できる。